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保険の経済合理性と検討の際のポイント

私は以前、節税対策の保険商品に興味を持ったことがあり、その時に保険に関して色々調べたことがあります。
保険の起源は紀元前2250年頃、バビロンのハンムラビ王の時代といわれており、ハンムラビ法典の中に、当時のキャラバン隊が盗賊に襲われ物資を略奪された際に、その損害を融資者が負担するという規定があったそうで、これが保険のルーツのひとつといわれており、保険のルーツは「海上保険」にあるというのが定説です。

生命保険に関してはハレー彗星を発見したイギリスの天文学者ハレーにより、「大数の法則」が人間の寿命にも当てはまることを発表し、その後、ジェームス・ドドソンという人物が、「ハレーの死亡表」の理論のもとに、年齢別の死亡率に応じた保険料を算出しました。これらを基に統計学と保険数理を基に公平で合理的な生命保険が誕生しました。

ところで保険は基本的にギャンブルと同じ仕組みでできています。よく引き合いに出されるのが「宝くじ」で、宝くじと保険に共通するのは、多くの人たちが支払う宝くじ代や保険料がプールされて、そこから賞金や保険金が支払われる仕組み、ということです。
宝くじは抽選で当選者が決まりますが、保険の場合は死亡のような偶然の不幸が発生した際に保険金という名の賞金が支払われます。保険が「不幸に賭ける宝くじ」といわれる所以です。どちらも高い手数料が取られます。宝くじは約50%、保険はおおよそ30~60%が手数料として差し引かれ、残りが賞金や保険金として分配される仕組みです。宝くじでは残りの50%は販売経費を差し引いた上で地方自治体に分配されます。経済学では、宝くじは「愚か者に課せられた税金」と呼ばれます。それは、宝くじを通じて「税金」を納めているのは、確率を正しく計算できない人だけだからという理屈です。
こうした事実を踏まえると果たして保険加入に合理性があるのか、疑問に思えてきます。
10年以上前でしょうか。疑問に思っていたところ、ピーター・バーンスタイン著「リスク」という本の中で書かれていた、ダニエルベルヌーイという方の「限界効用の逓減法則」を知り、保険の合理性に関して腑に落ちたことを覚えています。
「限界効用の逓減法則」というのは、「富の増加とともに富の効用は逓減する」という理屈のことです。
例えば、Aさん月収10万円、Bさん月収30万円、Cさん月収50万円、Dさん月収100万円、Eさん月収1,000万円の方それぞれいたとします。
仮に月収が5万円増加することになった時、月収の増加(富の増加)に対して富の満足度(富の効用)が高いのはA>B>C>D>Eになるでしょう。A、Bさんは5万円の月収増加でとても嬉しいし、実際に生活面でも助かるでしょう。しかし、Dさんや特にEさんは5万円増加したところ、大して嬉しくもないし、生活水準にもそれほど変化がないでしょう。
この考えに基づけば保険の加入にも一定の合理性があります。
収入が安定している時、不測の事態に備えて保険料を支払うことで、不測の事態で収入が激減して困窮することを防げるからです。収入が安定している時と困窮している時の富の効用(価値)が違うわけですから、期待値でいえば多少損な取引であってもつり合いが取れるという考えは成り立つということです。

私は10年前に日本最大手の乗合代理店に所属し、ほぼ全ての生命保険の商品を調べました。当時、生保で40社以上、損保で20社以上あり、生保の保険商品で1,000を超えていたと思います。
当時と事情は多少変わっているかもしれませんが、保険を検討する際のポイントをお伝えできればと思います。

・保険ナビット
・家族収入保障保険
・リスク細分型の保険

保険ナビット

乗合代理店専用のソフトで保険ナビットというソフトがあります。
これは条件を入力して検索することで、同条件の保険料の一覧を確認することができます。つまり、同条件でどの保険会社のどの商品が最も安価であるかわかるということです。保険料は純保険料(保険の原価)と付加保険料(各保険会社の経費や利益)から成り立っていますが、基本的に純保険料(原価)はどの保険会社でも相違ありませんが、付加保険料は異なります。同じような保険でも保険料が異なることがありますので、なるべく割安な商品を選ぶことが重要です。
保険営業の方が「保険ナビット」の存在を知らない、使えない場合は合理的な保険加入は難しいかもしれませんので注意しましょう。

家族収入保障保険

生命保険の主な役割は、世帯主に万が一の際の死亡保障かと思います。死亡保障というと、定められた期間までに万が一の際に〇千万円という保障が一般的かと思いますが、インフレを加味しなければ合理的とはいえません。例えば死亡保障が必要なのはお子様の大学卒業や定年退職までというように期間を定める時が多いと思うのですが、その期間が後20年あるのか、10年なのか、5年なのかで必要保障額は異なります。仮に保険金額を3,000万円とすると、年数が経つにつれ保障額が過分していくことになるわけです。
家族収入保障保険は決められた期間まで年金形式で月〇〇万円支払われるという保険です。例えば月収40万円の方が、万が一の際には月収15万円になってしまうとします。この時に仮に月25万円の家族収入保障保険に加入しておけば、決められた期間まで毎月25万円支払われるということになります。この場合、年数が経つにつれ保障額が減っていくということですから無駄がありません。
保険会社で「家族収入保障保険」がない場合、保険営業の方が商品を知らない場合は注意しましょう。

リスク細分型の保険

生命保険もリスク細分が進んでいます。リスク細分とは要はリスクが高い人と低い人が同じ母集団に属し、同じ保険料だと公平ではないのでわけるということです。例えば、タバコを吸う方と吸わない方、健康体の方とそうではない方では病気や死亡の確率が異なります。保険会社によっては同じ保険商品でもリスクが低い方(タバコを吸わない、健康体、無事故無違反)は保険料を安くするといった商品を提供しているところがあります。
リスクの低い方はこうした保険を検討した方が良いかもしれません。

基本的に保険は最低限の保証で設計するのがおすすめです。
保険料の累計での支払いは何百万円となりますし、保障内容が微妙だと後悔することになるかもしれません。昔ながらの大手保険会社、GNP(義理、人情、プレゼント)、カリスマ募集人からの提案で加入するのも良いかもしれませんが、最終的に残るのは「保険料の支払い」と「保険商品」そのものです。

皆様の合理的選択の一助になれば幸いです。

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